!!設計要求の決定 安定化コントローラの目標は,さまざまな条件の下で与えられた目標状態量まわりに機体運動を安定化することである.図において   r:誘導コントローラから入力される目標状態量 e:追随誤差 d:突風などの外乱 z:不確かさへの入力 w:不確かさからの出力 u:制御入力 y:コントローラが利用する機体出力 n:センサに加わるノイズ   である.またここでは不確かさを入力側の乗法的不確かさとして表現してあるが,現実の問題に応じたさまざまな表現が考えられる. {{ref_image PLANT.png}} '''閉ループ系''' ---- 安定化コントローラに対する主な設計要求は以下の通りである.   '''[要求1]''' 目標値への追随特性を高める. '''[要求2]''' 不確かさが存在しても安定である. '''[要求3]''' ノイズの出力への影響を低減する. '''[要求4]''' 外乱の出力への影響を低減する. '''[要求5]''' 制御入力を小さくする. '''[要求6]''' コントローラの次数をできるだけ低くする. ここで用いられている信号に対してどのような性質を仮定するか,要求をどのような評価関数に帰着させるか,不確かさをどのように表現するか,などによって用いる制御理論が異なってくる.またUAVは以下の特徴を持つ. !不確かさについて UAVにおける不確かさの主な要因は,微係数の推定誤差/変動とアクチュエータダイナミクスの誤差/変動である.p,q,rに関する動的な微係数は風洞試験で直接計測することができないため,その他の微係数と比較して推定誤差が大きい.また全ての微係数は飛行状態に応じて変動する.さらに価格やペイロードの制約から性能の良いアクチュエータを用いることができないため,舵面の空力負荷が大きい場合アクチュエータダイナミクスのゲインが低下し遅れも増加する.これらの不確かさは所在が明確なパラメータ変動としてある程度正確に大きさを見積もることができる.一方機体が小型であるためモデル化されない柔軟な構造のモードはあまり問題にならない.高迎角での飛行などのマニューバを行う場合は,機体周りの流体のダイナミクスと機体運動が連成する場合がある.この流体のダイナミクスを正確にモデル化することは困難であるため,十分大きなロバスト安定性を確保する必要がある. !ノイズについて UAVでは価格やペイロードの制約から性能の良いセンサを用いることができない.したがって'''[要求3]'''は制御系設計において十分考慮する必要がある. !外乱について 機体サイズが小さいため実機と比較して外乱の影響が大きい.'''[要求4]'''は制御系設計において十分考慮する必要がある. !コントローラの次数について 離散化しで実装されたコントローラは,できるだけ厳密にサンプリング周期ごとに計算する必要がある.しかしコントローラの次数が高いと計算時間による遅れが生じ所望の性能を発揮できない.離散化した状態方程式をそのまま計算したとすると,計算量は次数の約2乗に比例する.従って次数の高いコントローラを採用し連続系の解析において高い性能や安定性を発揮したとしても,実装することでそれらが悪化する場合も多い.次数と性能および安定性のトレードオフを図りながら適切な問題設定をする必要がある. ---- [[UAVの作り方へ戻る|HowtoMakeUAV]]